福祉事業を運営していると、ITを使って業務を効率化したいと考える方も多いと思います。そんな時に活用出来るのが、IT導入補助金です。
本記事を読んでいただくと、IT導入補助金の概要やスケジュール、申し込み方法、採択のポイント、介護・福祉事業に活用する方法がわかるようになります。
IT導入補助金とは
IT導入補助金の特徴
- 業務効率化につながるITツールなど様々なITツールの導入に利用できる
- 「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入枠」の5つの枠がある
- ITツールはあらかじめ登録されたものに限る
- IT導入支援事業者との申請が必要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的とし、業務効率化やDX化に向けたITツールの導入を補助してくれる補助金となります。
ただし、ITツールは、事前にITツールとして事務局に登録されている必要があり、申請については、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請しなくてはならない点が特徴です。
2024年は、2月16日に募集が開始となっており、3次の募集まであわせると5月20日が締め切りとなっています。補助金は、目的に応じて「通常枠」「インボイス枠(インボイス対応類型)」「インボイス枠(電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入枠」の5種類となっており、それぞれ要件がことなります。
名称 | 補助金額 | 用途 | 補助率 |
通常枠 | 5万円~150万円 (1プロセス以上) 150万円~450万円 (4プロセス以上) | 1事業のデジタル化を目的としたソフトウェアやシステムの導入を支援 | 2分の1以内 |
インボイス枠 (インボイス対応類型) | 10万円~350万円※1 | インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトを導入し労働生産性の向上をサポート | 2分の1~5分の4 |
インボイス枠 (電子取引類型) | 0万円~350万円 | インボイス制度に対応した受発注システムを商流単位で導入する企業を支援 | 2分の1~3分の2 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円~100万円 | サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスクに対処するため、サイバーインシデントに関する様々なリスク低減策を支援 | 2分の1 |
複数社連携IT導入枠 | 0万円~3000万円※2 | 業務上つながりのある「サプライチェーン」や、特定の商圏で事業を営む「商業集積地」に属する複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入し、生産性の向上を図る取り組みを支援 | 2分の1~5分の4 |
※2・・基盤導入経費、消費動向分析費は10万円~50万円×グループ構成員数で総額3000万円以下、その他経費は200万円以下
IT導入補助金は個人事業主も使える?対象となる介護・福祉事業所とは
IT導入補助金の対象となるのは、一定規模以下の中小事業者です。そのため、条件に当てはまる法人等であれば、どの形態にとらわれず全ての福祉事業所が対象となります。また、個人事業主としてソーシャルビジネスをやっている方も申し込み可能です。
具体的には、常時使用する従業員の数が300人以下、出資の総額が3億円以下といった中小企業や個人事業主が対象となります。
IT導入補助金の対象となる介護・福祉事業所
- 就労移行支援、就労継続支援A型・B型、放課後等デイサービス、児童発達支援、訪問介護、訪問看護、自立訓練、グループホーム等
申請の要件とは?gBizIDとSECURITY ACTIONは必須
IT導入補助金の申請は要件を満たしている場合に可能となります。申請をする際は、まず事業が各枠の要件を満たしているかどうかを確認しましょう。具体的な申請要件は次の通りです。
主な申請要件(各枠ごとに異なります。)
- 日本国内で登記、事業を営む法人または個人
- 最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上
- gBizIDプライムを取得している
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行う
- 労働生産性について3年間の事業計画を策定し実行すること等
また、※「gBizIDプライムの取得」および「SECURITY ACTION」は必須となりますので、この2つはどの枠で申し込みを考える場合でも必ず満たしておくようにしましょう。
※3複数社連携IT導入枠の「参画事業者」は、gBizIDプライムの取得は不要です。
gBizIDプライムとは
gBizIDプライムは、法人、および個人事業主向けの共通認証システムです。公式サイトより申請を行うことで無料で取得できますが、法人の場合は、取得まで2~3週間ほど時間がかかる可能性があるので、早めに取得をしておきましょう。
SECURITY ACTIONとは
SECURITY ACTIONは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。宣言を行うには、公式サイトから申し込みを行うことで完了します。
2024年度版IT導入補助金のスケジュール
2024年度のIT導入補助金は、2024年2月16日(金)に各枠によって募集期間、スケジュールが異なります。募集は一度で終わりではなく、1次、2次と複数回にわたって行っている枠もあります。
各枠の1次募集スケジュール
枠名 | 受付開始日 | 締め切り日 |
通常枠 | 2024年2月16日 | 2024年3月15日 17:00 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | 2024年2月16日 | 2024年3月15日 17:00 |
インボイス枠(電子取引類型) | 2024年2月16日 | 2024年3月15日 |
セキュリティ対策推進枠 | 2024年2月16日 | 2024年3月15日 17:00 |
複数社連携IT導入枠 | 2024年2月16日 | 2024年4月15日 17:00 |
IT導入補助金の対象となる経費
補助対象となる経費は、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用のみです。ITツールは、生産性向上等の効果が見込める必要があるものでなくてはなりません。
補助対象となるITツールはおおまかに下記の表に分類され、各枠によって申請ができる分類がことなります。
大分類 | 中分類 | 小分類 | 対応枠 |
大分類Ⅰ ソフトウェア | カテゴリー1 | ソフトウェア | 通常枠 インボイス枠(電子) インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅱ オプション | カテゴリー2 | 機能拡張 | 通常枠 インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅱ オプション | カテゴリー3 | データ連携ツール | 通常枠 インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅱ オプション | カテゴリー4 | セキュリティ | 通常枠 インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅲ 役務 | カテゴリー5 | 導入コンサルティング | 通常枠 インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅲ 役務 | カテゴリー6 | 導入設定・マニュアル作成・導入研修 | 通常枠 インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅲ 役務 | カテゴリー7 | 保守サポート | 通常枠 インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅳ ハードウェア | カテゴリー8 | PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機 | インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
大分類Ⅳ ハードウェア | カテゴリー9 | POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機 | インボイス枠(インボイス対応類型) 複数社連携IT導入枠 |
IT導入補助金で導入できるツール
IT導入補助金で導入できるのはITツールとなりますが、どんなソフトでも自由に補助を受けられるというわけではなく、事務局に登録されているITツールに限られます。具体的なツールについては、ITツール・IT導入支援事業者検索から検索することが出来ます。
介護・福祉事業者におすすめソフト
IT導入補助金で導入できるツールには1万件以上の登録があります。その中から特に介護、福祉事業所におすすめしたいツール・ソフトをまとめました。
ケアノート
ケアノートは、誰でもかんたんに操作することが出来る介護記録システムです。忙しい介護現場において、簡単に記録を入力でき、スタッフ間での共有をリアルタイムで行うことができます。
その他にも、スタッフ勤務表の作成、週間サービス予定の作成など、介護事業所で欠かすことができない様々な書類をクラウド上で作成、管理することができます。
IT導入補助金を活用することで2分の1以内で補助を受けることができますので、この機会にぜひ検討してみて下さい。
ケア・オール
ケア・オールは、障がい者向けグループホーム向けの一括管理システムです。支援記録や個別支援計画の作成など必要書類の作成から請求管理業務まで、障がい者向けグループホーム運営に必要な事務業務を効率的に行うことができます。
また、支援記録を家族と共有や、最新の報酬改定にも対応、データでは、なんと年間1580時間以上の工数を削減することに成功しています。グループホームを運営していくなら、ぜひとも導入したいアプリとなっています。
IT導入補助金を活用することで、最大150万円以上の補助を受けることが可能です。ぜひ導入を検討してみて下さい。
ほのぼのmore
ほのぼのmoreは、計画相談支援や地域移行支援、地域定着支援で使える相談支援の管理サービスです。相談の受け付け状況のスケジュール管理や、加算継続利用の自動判別、請求明細の作成など、相談支援に必要な作業をデジタルデータで一括して管理することが出来ます。
デジタルデータで利用者の管理を行うことで、利用者の検索や状況確認などを簡単に行うことができ、効率的に業務を進めるられます。
ほのぼのmoreは無料デモを体験することもできます。相談支援をツールを使って効率的に進めるたいなら、ぜひ一度体験してみてください。
IT導入補助金申請から交付を受けるまでの流れ
IT導入補助金申請の流れについて、解説します。IT導入補助金は、通常の補助金の申請手順に加え、gBizプライムアカウントの取得などの作業が必要となります。
IT導入補助金はIT導入支援事業者と連携し申請が必要です。まず補助ツールの選定を行い、導入支援事業者に相談
各枠の申請要件を確認し、条件に該当するかを把握しましょう。
「gBizIDプライム」アカウントの取得、「SECURITY ACTION」宣言はどの枠でも必須となっています。申請期日に間に合うように済ませておきましょう。
申請者はIT導入支援事業所と連携し、見積もりを作成します。
申請は、申請マイページから行います。IT導入支援支援事業者からの招待をうけ、マイページを作成します。
マイページに申請情報を入力し、申請を行います。
ITツールを導入し、申請内容に基づき補助事業実施します。
実施報告書を作成し、提出します。
事務局より、補助金の交付を受けます。
事業実施効果報告書を作成し、提出します。
IT導入補助金は、豊富なITツールを補助金を使って導入でき、採択されれば事業の効率化や売り上げ向上につながります。ここでは、IT導入補助金に採択されるためのポイントを3つお伝えします。
IT導入補助金は加点を獲得して採択を目指そう
IT導入補助金に採択されるためには、加点を項目を増やすことが有効です。加点項目の中には、「みらデジ経営チェック」など簡単に実施できるものだったり、介護職員等特定処分改善加算など、通常の営業の中で実施できるものもあります。
加点項目を増やせばそれだけ採択される可能性をあげることが出来ますので、獲得しておくことをおすすめします。
加点項目 | 対象枠 | 獲得方法 | 参考リンク |
地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の策定 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 域経済牽引事業計画について都道府県の承認を得る | 地域未来投資促進法 |
地域未来牽引企業 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること | 地域未来牽引企業 |
クラウドを利用したITツール導入の検討 | 通常枠 | 導入するITツールとしてクラウド製品を選定 | 「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」 |
インボイス対応ITツール導入の検討 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 導入するITツールとしてインボイス対応製品を選定 | ITツール検索ページ |
賃上げの事業計画の策定、従業員への表明、事業計画の達成 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 各枠において要件を満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明、達成する | 加点対象となる施策 |
SECURITY ACTIONの「★★ 二つ星」の宣言を行っていること | セキュリティ対策推進 | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「★★ 二つ星」の宣言を行う | SECURITY ACTIONの概要 |
「みらデジ経営チェック」を実施していること | 通常枠(必須項目) インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 中小企業庁が実施するデジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」における「みらデジ経営チェック」を交付申請前に行う | みらデジ経営チェック |
国の推進するセキュリティサービスを選定しているか | 通常枠 インボイス枠(通常) | 導入するITツールに、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているITツールが含まれている | サイバーセキュリティお助け隊サービス制度 |
健康経営優良法人2024 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 令和5年度に「健康経営優良法人2024」に認定された事業者であること | 健康経営優良法人2024 |
「地域DX促進活動支援事業」における支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けた事業であるか | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 地域の産学官金が参画する支援コミュニティ・コンソーシアムを立ち上げ、地域企業のDXに向けたサポート(地域企業の課題分析・戦略策定の伴走型支援、地域企業とITベンダー等とのマッチング支援等)を実施 | 地域DX促進活動支援事業 |
事業継続力強化計画の認定を取得していること | セキュリティ対策推進 | 中小企業が自社の災害リスクを認識し、防災・減災対策の第一歩として取り組むために、必要な項目を盛り込んだ計画を策定、申請し認定をうける | 事業継続力強化計画の申請方法等について |
介護職員等特定処遇改善加算 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | 介護職員等特定処遇改善加算を取得する | 介護職員の処遇改善 |
くるみん・えるぼし認定 | 通常枠 インボイス枠(通常) インボイス枠(電子) セキュリティ対策推進 | えるぼし認定、またはくるみん認定を受けているもの。 | えるぼし認定について くるみん認定について |
IT導入補助金でパソコンは買える?ホームページは作れる?
IT導入補助金を導入したいという方がよく持つ疑問が、パソコンが買えるのか、またホームページが作れるのかといった疑問です。
パソコンはソフトウェアを合わせて購入する必要がある
パソコンは、単体で購入することはできず、必ずソフトウェアと組み合わせた購入が必要です。IT導入補助金の目的は、あくまでもITツールによって業務の効率化等を補助することです。そのため、単に事業で使用するパソコンの購入費用を補助してもらうことはできません。
また、IT導入補助金については「インボイス枠(インボイス対応類型)」でのみパソコンの購入に対応しており、インボイス制度に対応した会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトを導入することが条件となっています。
補助金額は最大10万円、補助率は2分の1以内となります。
IT導入補助金2024においてパソコンを購入する条件
- インボイス枠(インボイス対応類型)で申し込み
- 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフトを導入する
- レジ以外の用途で使用
- IT導入支援事業者からの購入に限る。
ホームページやECサイト単体の作成はできない
ホームページやECサイトは、単体で作成することはできません。IT導入補助金は、業務効率化のためのITツールの導入を目的としていることから、単なる宣伝や情報を告知するためのホームページや、自社事業んためのECサイト作成のための利用は不可となっています。
ホームページを作成する場合は、顧客対応や販売支援のITツール等を通常枠で導入、またはインボイス枠(電子取引類型)において、インボイス制度に対応した受発注システムを導入し、ツール利用のためのページとして作成します。
また、ITツールを導入する場合であっても、ITツール自体が一つのシステムとして動いている場合は、ホームページ作成の必要がないため、作成できません。ホームページ作成費用として利用するには、例えばホームページに組み込んで使うシステムを使い、機能拡張と合わせてホームページを作成するといった方法が考えられます。
IT導入補助金2024においてホームページを作成する条件
- 通常枠で申し込み、顧客対応や販売支援のITツールを導入
- インボイス枠(電子取引類型)で申し込み、受発注ソフトをページ内で利用
IT導入補助金2024のよくある質問
その他、IT導入補助金2024でよくある質問をまとめました。
Q.「申請マイページ」とは何ですか?
A.申請者(中小企業・小規模事業者等)が各種申請等や各種手続き等を行うポータルサイトの呼
称。IT導入支援事業者からの招待で開設します。
Q.対象ソフトの一覧はどこで確認できますか?
A.こちらのページで確認できます。
Q.IT導入補助金でチラシの作成はできますか?
A.チラシの作成は出来ません。
Q.複数の枠に申請できますか?
A.申請可能です。
Q.採択結果の通知はどこで知ることができますか?
A.申請マイページから確認できます。
Q.デジタル化基盤導入枠はありますか?
A.IT導入補助金2024において、デジタル化基盤導入枠はありません。
まとめ
本記事では、IT導入補助金2024について解説しました。IT導入補助金は、DX化で事業を促進したい場合に、ぴったりの補助金となりますので、ぜひ活用してみてください。