【開業できない!?】福祉事業所の立ち上げに必要な資格とは?

kaigyoushikaku コラム

福祉事業を立ち上げる際に、資格が必要なのかと気になっている方もいることでしょう。福祉には、介護福祉士、社会福祉士、サービス管理責任者など、様々な資格があります。そこでここでは福祉事業所の立ち上げに必要な資格や、あると役立つ資格をお伝えします。

福祉事業所の立ち上げ・開業に資格は必要?

結論からいうと、福祉事業所の開業や立ち上げは、法人格があれば個人に必要な資格はありません。NPO法人や株式会社、合同会社といった法人格があれば、誰でも事業所の開業が可能です。(一部障害福祉事業では管理者に資格が必要な場合あり)ただし、施設の職員として、保育士や社会福祉士、介護福祉士、サービス管理責任者、児童発達責任者といった有資格者を人員として配置する必要があります。

福祉事業の起業、立ち上げに持っていると便利な資格

福祉事業の立ち上げや起業には、法人格以外に必要な資格はありませんが、起業してしばらくは、管理者と職員を兼務することが多いかと思います。そこで、起業や立ち上げにあたり、持っていると便利な資格を紹介します。

1.社会福祉主事任用

社会福祉主事とは、行政より福祉事務所等に任用される場合に必要となる資格です。大学において所定の科目を履修するなど、一定程度の福祉についての知識、経験を要することを証明する資格であり、福祉事業所においても、社会福祉主事の規定が準用され、管理者に社会福祉主事任用の資格を要求される場合があります。

社会福祉主事任用資格は下記の条件で取得可能となっています。

  • 大学や短期大学において厚生労働大臣が指定する科目のうち3つ以上を履修して卒業
  • 全国社会福祉協議会の社会福祉主事資格認定通信課程または日本社会事業大学の通信教育過程を修了
  • 指定養成機関を修了(22科目1500時間)
  • 都道府県等講習会を受講(19科目279時間)
  • 社会福祉士、精神保健福祉士の資格を有するもの等

参考:厚生労働省社会福祉主事任用資格の取得方法

2.サービス管理責任者

サービス管理責任者とは、障害福祉サービスにおいて配置が義務付けられている資格で、利用者へのアセスメント、個別支援計画など、サービス提供の責任者としての役割を果たします。

管理者は兼務が可能なため、サービス管理責任者と兼務することで、人件費削減にもつながるため、福祉事業の開業を考えている場合は、ぜひとも取得しておきたい資格となります。

サービス管理責任者については、所定の実務経験を積んだのち、サービス管理責任者等実践研修等を受ける必要があります。

実務経験要件

  • 相談支援業務5年以上
  • 直接支援業務8年以上
  • 有資格者等による支援業務5年以上


参考:障害福祉サービスにおける サービス管理責任者についてー厚生労働省

参考:サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の見直しについて

児童発達支援管理責任者

児童発達支援管理責任者は、児童発達支援、放課後等デイサービスにおいて配置が義務付けられている資格で、個別支援計画の作成などサービス提供についての責任者としての役割を持ちます。管理者と兼務が可能なため、福祉事業の開業を考えている場合は、ぜひとも取得しておきたい資格となります。

児童発達支援管理責任者の資格を取得するためには、直接支援や相談支援での実務経験年数を満たすと共に、児童発達支援管理責任者実践研修等を終了する必要があります。

実務経験要件

  • 相談支援業務5年以上
  • 直接支援業務8年以上
  • 有資格者等による支援業務5年以上
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参考:児童発達支援管理責任者の要件について – 福岡市

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参考:児童発達支援管理責任者の資格要件ー兵庫県

【事業所別】福祉事業に必要な資格・人員配置

では、福祉事業所に必要な資格や人員配置についてみていきましょう。なお、自治体によっては、紹介した以外にも資格要件等が必要になる場合があります。開業を検討する際は、必ず所属の自治体に確認するようにしましょう。

居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護

必要な資格・人員

  • 管理者(資格要件なし)
  • サービス提供責任者
  • ヘルパー(常勤換算2.5人以上)

居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護は、障害者の在宅での介護や外出する際の手助けを行う事業所であり、人員配置基準は同じになっています。必要な人員は、管理者、サービス提供責任者※1、およびヘルパー※2を常勤換算で2.5人以上配置する必要があります。

※ 1介護福祉士、実務者研修修了者、旧介護職員基礎研修課程修了者、旧居宅介護従業者養成研修又は旧訪問介護員養成研修(以下「ヘルパー研修」という。)1 級課程修了者、看護師、准看護師等

※2介護福祉士、実務者研修修了者、居宅介護職員初任者研修課程修了者、介護職員初任者研修課程修了者、旧介護職員基礎研修課程修了者、旧ヘルパー研修1級課程修了者、旧ヘルパー研修2級課程修了者、看護師、准看護師等

参考:厚生労働省 支援費制度における指定居宅介護(ホームヘルプ)の事業について

重度障害者等包括支援

必要な資格・人員

  • 管理者(資格要件なし)
  • サービス提供責任者

重度障害者等包括支援は、常時介護を要する障害者に対して、訪問系サービスや通所サービスを組み合わせ、包括的な介護を提供する事業所です。重度障害者等包括支援については、管理者(兼務可)、およびサービス提供責任者※1の配置が必要です。

※1相談支援専門員の資格を有する者、又は重度障害者等包括支援対象者の直接処遇に3年以上従事した者

参考:厚生労働省 重度障害者等包括支援に係る報酬・基準について

短期入所

  • 管理者(兼務可)
  • 生活支援員(資格要件無し)

短期入所は、居宅において介護を受ける方が、事情により短期間入所が必要な場合に利用できるサービスです。必要な人員は、管理者(兼務可)と生活支援員となっており、生活支援員については、資格は必要ありませんが、利用者に応じた人員を配置する必要があります。生活支援員の人数は、併設型・空床型施設と単独型によってもことなりますが利用者が6名ごとに1名の人員配置が必要となっています。

参考:厚生労働省 短期入所に係る報酬・基準について≪論点等≫

療養介護

  • 管理者(医師、兼務可)
  • サービス管理責任者
  • 医師
  • 看護職員(看護師、准看護師、看護補助者)
  • 生活支援員

療養介護は、身体や精神に障害を持ち、医療機関でのケア、および介護を必要とする方に向けたサービスを提供する事業です。

そのため、管理者は医師の資格が必要となっています。その他、サービス管理責任者、および看護職員(看護師、准看護師、看護補助者の資格が必要)、生活支援員(資格なし)を配置する必要があります。また、看護職員、および生活支援員の人数は、利用者の数によって必要な人員が異なってくる※点に注意が必要です。

※サービス管理責任者・・利用者数 60 人以下:1人以上、利用者数 61 人以上:1人に,利用者数が 60 人を超えて40 又はその端数を増すごとに1人を加えて得た数以上
看護職員・・常勤換算で利用者数を2で除した数以上
生活支援員・・療養介護の単位ごとに,常勤換算で利用者数を4で除した数以上(1人以上は常勤)

参考:札幌市療養介護

生活介護

  • 管理者(社会福祉主事任用資格等)
  • サービス管理責任者
  • 医師
  • 看護職員(看護師、准看護師、看護補助者)
  • 理学療法士又は作業療法士(訓練内容により必要な場合)
  • 生活支援員

生活介護は、障害により常に介護を必要とする方に、主に昼間において介護サービスを提供する事業所となります。生活介護では、管理者、医師、看護職員員(保健師又は看護師若しくは准看護師)、生活支援員、理学療法士又は作業療法士の配置が必要となっています。管理者は兼務可ですが、社会福祉主事任用資格等が必要、生活支援員は一人以上が常勤などの条件※があります。

※看護職員(保健師又は看護師若しくは准看護師)、理学療法士、作業療法士及び生活支援員の総数は生活介護の単位ごとに、常勤換算方法で、(1)から(3)までに掲げる平均障害程度区分に応じ、それぞれ(1)から(3)までに掲げる数とする。
 (1)障害程度区分の平均値が4未満      利用者の数を6で除した数以上
 (2)障害程度区分の平均値が4以上5未満  利用者の数を5で除した数以上
 (3)障害程度区分の平均値が5以上      利用者の数を3で除した数以上
   *利用者の数は前年度の平均値。新規指定の場合は推定数
管理者・・社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事任用資格)に該当する者若しくは社会福祉事業に2年以上従事した者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者。
看護職員・・生活介護の単位ごとに1以上。
生活支援員・・生活介護の単位ごとに1以上。
理学療法士又は作業療法士・・日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う場合は、当該訓練を行うのに必要な数。

参考:札幌市療養介護

施設入所支援

  • 管理者(社会福祉主事任用資格等、兼務可)
  • サービス管理責任者
  • 生活支援員(無資格)

施設入所支援は、入所する障害者に対して、介護サービス等を提供する事業となります。必要な人員は、施設長(管理者)、サービス管理責任者、生活支援員となっており、管理者は、※1社会福祉主事任用資格と同等の資格が必要で、生活支援員を※2利用者の人数に応じて配置する必要があります。

※1社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事任用資格)に該当する者若しくは社会福祉事業に2年以上従事したもの又はこれらと同等以上の能力を有すると認める者でなければならない。
※2施設入所支援の単位ごとに、利用者の数が60人以下で1人以上、利用者の数が60人以上で利用者の数が60を超えて40又はその端数を増すごとに1を加えた数以上。ただし、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、又は就労移行支援を受ける利用者に対してのみその提供が行われる単位にあっては、宿直勤務を行う生活支援員を1以上とする。

参考資料:札幌市施設入所支援

共同生活援助

  • 管理者(兼務可)
  • サービス管理責任者
  • 世話人(無資格)
  • 生活支援員(無資格、外部利用サービスの場合は不要)
  • 夜間従事者(無資格、介護サービス包括型及び外部サービス利用型は任意)

共同生活援助は、障害のある人が共同生活を送るための住居や介護サービス等を提供する事業です。必要な人員は、管理者、サービス管理責任者、世話人、生活支援員(外部利用サービスの場合は不要)、夜間支援従事者(介護サービス包括型及び外部サービス利用型は任意)となっています。

サービス管理責任者以外に資格要件はありませんが、介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中サービス支援型のそれぞれで配置要件が異なる点に注意が必要です。

参考:共同生活援助(グループホーム)の基準 概要ー埼玉県

自立訓練(機能訓練)

必要な資格・人員

  • 管理者(兼務可、社会福祉主事任用等)
  • サービス管理責任者
  • 看護職員(保健師又は看護師若しくは准看護師)
  • 理学療法士又は作業療法士(確保できない場合は看護師その他を機能訓練指導員として配置)
  • 生活支援員(無資格)

自立訓練は、障害のある方が自立して日常生活を送れるように支援する事業所です。必要な人員は、※1管理者、サービス管理責任者、看護職員(保健師又は看護師若しくは准看護師)、理学療法士又は作業療法士(確保できない場合は看護師その他を機能訓練指導員として配置)、生活支援員(無資格)となっています。

また、看護職員、理学療法士又は作業療法士及び生活支援員の総数は、常勤換算で、利用者数を6で除した数以上の人員が必要となります。

※1・・社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事任用資格)に該当する者。

就労移行支援

必要な資格・人員

  • 管理者(兼務可、社会福祉主事任用等)
  • サービス管理責任者
  • 職業指導員(無資格)
  • 生活支援員(無資格)
  • 就労支援員(無資格)

就労移行支援事業所は、障害のある方に向けて、就労のための訓練等を提供する事業所となっています。必要な人員は、管理者※1、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員、就労支援員となっています。管理者、サービス管理責任者以外は無資格で就業可能ですが、職業指導員及び生活支援員は、利用者の数を6で除した数以上の人員を用意する必要があります。

※1・・社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事任用資格)に該当する者。

参考:札幌市就労移行支援

就労継続支援A型

必要な資格・人員

  • 管理者(兼務可、社会福祉主事任用等)
  • サービス管理責任者
  • 職業指導員(無資格)
  • 生活支援員(無資格)

就労継続支援A型は、障害のある方等に向けて、就労の機会および訓練を提供する事業所です。必要な人員は、管理者※1、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員となっています。職業指導員、および生活支援員には資格要件はありませんが、常勤換算で利用者数を 10 で除した数以上の配置が必要です。

※1・・社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事任用資格)に該当する者。

参考:札幌市就労継続支援A型

就労継続支援B型

必要な資格・人員

  • 管理者(兼務可、社会福祉主事任用等)
  • サービス管理責任者
  • 職業指導員(無資格)
  • 生活支援員(無資格)

就労継続支援B型は、通常の就労が困難な障害者等に対して、作業の機会や就労に向けた訓練の場所を提供する事業所です。管理者※1、サービス管理責任者、職業指導員、生活支援員となっています。職業指導員、および生活支援員には資格要件はありませんが、常勤換算で利用者数を 10 で除した数以上の配置が必要です。

参考:札幌市就労継続支援B型

※1・・社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事任用資格)に該当する者。

放課後等デイサービス・児童発達支援

必要な資格・人員

  • 管理者(兼務可)
  • 児童発達支援管理責任者
  • 児童指導員又は保育士

放課後等デイサービス、児童発達支援は、18歳以下の障害児に向けて、日常生活の訓練等を行うサービスです。必要な人員は、管理者、児童発達支援管理責任者※1、児童指導員又は保育士※2となっています。

医療的ケアを実施する事業所については看護職員(※)を基準人員(児童指導員又は保育士)の合計数に含めることもできます。児童発達支援管理責任者はサービス管理責任者と同じように、所定の研修を終了する必要があり、児童指導員または保育士は、利用者10人を超えるごとに1人増員などの条件があります。

※1相談支援業務の経験が5年以上または、直接支援業務の経験が8年以上、または特定の資格保有者としての相談支援・直接支援業務の経験が5年以上、所定の研修の受講が必要

※2児童指導員とは・・児童福祉施設職員養成学校を卒業したもの、社会福祉士、精神保健福祉士、小・中・高校の教諭となる資格を有するもの、学校教育法規定の大学または大学院で社会福祉学・心理学・教育学・社会学のいずれかに関する学部・研究科・学科・専攻を卒業したもの、2年又は3年以上児童福祉事業に従事したものなどを指す。

参考:児童発達支援事業・ – 東京都障害者サービス情報

まとめ

本日は、主な障害福祉サービスで必要な資格についてご紹介しました。福祉事業所においては、管理者には資格要件がない事業所が多いですが、従業員には資格が必要な場合があり、もし必要な資格がない場合は、報酬の減算や、最悪の場合は指定取り消しといった処分が下されることもありますので、注意しましょう。福祉サービスの開業を考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!

監修者

トキタ行政書士事務所代表 鴇田 光晴。成蹊大学卒業。重度重複の障害者入所施設、児童発達支援や放課後等デイサービスでの勤務を経て行政書士として開業。加算や開業支援等、現場での経験を活かした実践的なサポートを提供しています。

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