福祉サービスは多様化しており複雑です。また、利用にあたりサービス等利用計画が必要になります。そこで自分に最適な福祉サービスを相談したり、また地域生活のための助言を受けたり、サービス等利用計画の作成を助けてくれるのが相談支援事業所です。
本記事では、相談支援事業所を開業したいという方に向けて、費用や開業の流れ、成功のためのポイントをお伝えします。
相談支援事業とは
相談支援事業とは、障害のある方が自立した日常生活を営なめるよう、相談、助言等の支援を行う事業をさします。相談支援事業には、大きく分けて特定相談支援事業、一般相談支援事業の2種類があります。
障害のある人の福祉に関する様々な問題について、障害のある人等からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用支援等を行うほか、権利擁護のために必要な援助も行います。
特定相談支援事業(計画相談支援)
特定相談支援事業は、「計画相談支援」を行う事業のことで、障害福祉サービス等の利用申請を行った利用者に対し、サービス等利用計画の作成、および見直し等を行います。また、必要に応じて関係機関やサービス提供者との調整を行います。
対象者:障害福祉サービスを利用する人
一般相談支援事業(地域相談支援)
一般相談支援事業は、障害のある方やその家族が、地域での生活を円滑に送るための相談支援を行う「基本相談支援」、施設や病院などから地域へ出て自立した生活を送る「地域移行支援」、自立した人が地域生活を送っていくことを支援する「地域定着支援」があります。
対象者:障害のある方やその家族、地域の中で障害者支援に関わる人等
相談支援事業開業の流れとは
相談支援事業は、行政から指定を受けることで運営が可能な事業となります。そのため、開業には通常の事業とは異なる手順が必要です。
ここでは、相談支援事業開業の流れについて解説します。なお、指定については各自治体で管理されているため、自治体によっては手順等が異なる可能性があるため、必ず自治体に確認しましょう。
自治体へ相談
相談支援事業の開業を考えている場合は、まず管轄の自治体に相談してみましょう。相談先は、役所の障害福祉課等になります。相談支援事業は、自治体からの指定申請がなければ開業できません。
自治体によっては、事業所の数を制限していたり、開業にあたり説明会等への出席を義務付けているところもあります。いざ開業に向けて準備を進めていたのに、自治体からの許可がおりなかったという事態を避けるためにも、必ず相談しましょう。
法人設立
相談支援事業所など、障害福祉事業の運営主体は、法人である必要があり、個人では開業できません。そのため、法人を設立していない場合は、まず法人を設立しましょう。法人については、合同会社、株式会社、NPO法人、一般社団法人等がありますので、自身の状況に合わせて、適切な法人を選択します。
物件探し、人員募集
自治体に相談のうえ、開業可能となったら、物件探し、および人員募集を開始しましょう。物件については、指定にあたり定められた条件を満たしている必要があります。
事業を行うために必要な広さの区画を有するとともに、相談支援の提供に必
要な設備及び備品等を備えなければならない
日野市「特定・障害児相談支援事業者 指定申請の手続き」
具体的には、相談を行うためのスペースがあること、また明確に区分された事務室があること、相談支援に必要な備品、設備等を備えている必要があります。
また、専従の管理者、および専従の相談支援専門員※が1名以上必要です。
※相談支援専門員・・所定の実務経験、および相談支援従事者初任者研修を受けた人員。詳しくは
厚生労働省「計画相談のしくみ」をご確認ください。
申請書類の作成・申請
物件探しや人員募集を行いながら、申請書類の作成、および申請を行います。指定のためには、申請書に加えて、定款や事業計画書といった様々な書類を準備して提出する必要があります。
不備があればやり直しになり、指定を受けたい期日に間に合わないこともあります。書類作成については、できるものは早い段階から進めていき、提出できる状態になったら速やかに提出できるように準備しておくといいでしょう。
相談支援事業所に必要な書類の例
- 指定申請書
- 事業計画書
- 定款
- 事業所平面図
- 賃貸契約書
- 運営規定
提出書類は各自治体によって異なり、所定の様式が用意されている場合もあるため、必ず自治体で確認するようにしましょう。
指定申請の許可
申請書類を提出し、問題なければ、晴れて相談支援事業所として運営をすることができます。指定申請までは、最低でも三か月程度は時間を要します。そのため、申請を受けたい日から半年ほど前から動きだすようにするといいでしょう。
相談支援事業所立ち上げに必要な費用とは
相談支援事業所設立の際に気になるのが費用面ですよね。費用については、規模によっても様々となりますが、一般的な場合を例にして解説します。
法人設立費用
相談事業所を開くには必ず法人が主体となる必要があります。そのため、法人をまだ設立していない場合は、法人設立の費用が必要となります。法人設立費用は、法人によって様々です。また行政書士等に代行を依頼した場合は、その分の費用もかかります。
法人と設立費用例
・合同会社・・約5万円
・株式会社・・約20万円
・一般社団法人・・10万円
・NPO法人・・0円
物件取得費用
相談支援事業を開始する場合、多くの方が物件を賃貸して始める形になると思います。物件取得費用は、地域や事業所の広さによってまちまちとなりますが、敷金や礼金、保証金、事務手数料等も含めて100万円程度は最低でもみておくといいでしょう。
場合によっては6か月分の家賃が必要といった物件もあるため、そういった物件の場合は、その分費用が高額となります。
人件費
相談支援事業所を始めるには、最低でも1名の管理者、および1名以上の相談支援専門員が必要となります。管理者を自分がする場合は、その分は抑えられるとしても、相談支援専門員については、事業所開所前から人員をそろえておく必要があります。常勤、非常勤は問われませんが、常勤の職員を開業のひと月前から雇用した場合、月20万円~30万円は必要となります。
備品等購入費用
相談支援事業を運営していくためには、様々な備品が必要となります。机やいす、パソコンや鍵付きのロッカーなどをそろえる必要があります。相談室の広さにもよりますが50万円程度はみておくといいでしょう。
運転資金
開業しても、すぐに利用者さんが集まるとは限りません。また通常の事業と違い、福祉事業は売り上げが事業所に入るまでタイムラグがあります。そのため、ある程度収入がなくても事業を継続していけるだけの運転資金が必要がです。
運転資金は、人件費と家賃、水道光熱費など、固定費の半年分ほどは最低でも用意しておくといいでしょう。おおよそ500万円は用意しておきたいところです。
必要な費用の合計は
相談支援事業の開業に必要な費用はおおむね下記のようになります。
法人設立費用(10万円)+物件取得費用(100万円)+人件費(30万円)+備品購入費用(50万円)+運転資金(500万円)=690万円
おおよその費用となりますが、700万円~1000万円は用意しておくと安心できるでしょう。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000114063_5.pdf
相談支援事業の運営を成功させるポイント3選
せっかく相談支援事業を行うなら成功したいですよね。そこでここでは実際の体験等をもとに、相談支援事業を運営させるためのポイントをお伝えします。
1.地域や行政機関とのつながりを持っておく
相談支援事業において、利用者さんを集めるためにも大切なのが、地域や行政機関とのつながりです。相談支援事業を行う上で、周囲の機関の理解を得ることが必要です。地域や行政機関とのつながりを作っておけば、対象者がいれば紹介してもらったりと事業所にとってもプラスとなります。つながりを持つためにも、自分からあいさつにいく、イベント等に顔をだすなど、工夫をしておくといいでしょう。
2.事前に周知しておく
相談支援事業所を開業する場合は、事前に開業を周知しておくといいでしょう。福祉事業の場合は、売り上げが入るまでにタイムラグがあります。そのため、できるだけ早く利用者さんにしってもらい、開業前から認知してもらうことが大切です。SNS等を使い、周囲にできるだけ存在をアピールしましょう。
3.運転資金に余裕をもつ
運転資金は、可能であればできる限り余裕をもちましょう。運転資金がないと、倒産してしまうばかりか、打ち手もどんどん狭くなってしまいます。資金難に陥ると、利用者さんや職員にかけられるお金が少なくなり、サービスの低下やビジネスが拡大できないといった状況に陥る可能性があります。
まとめ
相談支援事業は、福祉事業の中でもコンパクトの始めやすい事業だと思いますが、相談後の継続的なフォローが必要となります。相談支援事業を始めたいという方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。