障害者福祉施設立ち上げの資金はいくら?開業費を抑えるポイントも紹介!

fukushikaigyoushikin コラム

障害者福祉施設を開業する時に、どれくらい資金が必要なのか気になっていませんか。そこで今回は事業所別に福祉事業の開業資金をご紹介します。福祉事業で起業を考えているという方はぜひ参考にしてみて下さい。

障害福祉施設の開業に必要な費用

まず初めに、障害福祉施設の開業にあたり、かかってくる費用を解説します。福祉事業所を解説するには、物件の取得費用や、設備投資費、人件費など、様々な費用が必要となります。

法人設立費用

障害福祉施設を始めるには、法人である必要があります。そのため、法人設立費用が必要です。障害福祉事業を行える法人は、NPO法人、社会福祉法人、株式会社、合同会社、一般社団法人などがあり、法人ごとに設立費用はことなります。また、自治体によっても法人の種別はことなるため、希望の福祉サービスを設立可能な法人を必ず自治体に確認するようにしましょう。

指定を受けるための要件は障害者総合支援法第36条に基づき、概ね以下の通りです。
① 法人格を有すること(※)…第3項第1号
② 事業所又は施設の指定基準を満たすこと…第3項第3号
③ 適正な運営が見込めること…第3項第2号、第3号

東京都障害者サービス情報「指定申請の手引き」


法人の設立には、役所に提出する印紙代、定款登録のための登録免許税、登記簿謄本取得費用や印鑑作成費用などが必要です。また、司法書士や行政書士に依頼する場合は、その費用も必要となります。

福祉事業を開業できる法人と設立費用(費用は自分で手続きをおこなった場合)

  • 株式会社・・約25万円
  • 合同会社・・約5万円(電子定款を利用した場合)
  • NPO法人・・無料
  • 一般社団法人・・10万円以上
  • 社会福祉法人・・100万円以上

物件取得費

障害者施設を始める場合は、物件が必要です。物件は、施設の規定に応じた広さや設備の要件を満たす必要があります。建築基準法や消防法、障害者総合支援法等の条件をみたし、かつ自治体の条例なども確認しましょう。物件を取得する場合は、敷金(保証金)、礼金、仲介手数料、各種保険の加入料などが必要です。

第五十八条 自立訓練(生活訓練)事業所には、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所及び多目的室その他運営上必要な設備を設けなければならない。

障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準を定める条例 第58条

就労移行支援
ウ.訓練等に必要な設備
・訓練・作業室…利用者の訓練に支障がない広さを確保(1人当たり3㎡以上)
・訓練・生産活動等に必要となる器具備品
エ.日常生活を支援するために必要な設備
・洗面
・便所(男女別)
・事務スペース…利用者の支援記録や請求に関わる書類の作成等の場
・相談室…室内における談話の漏えいを防ぐための天井までの壁を設ける。
・多目的室…サービス提供の場、利用者の食事や談話の場等

東京都障害者サービス情報「指定申請の手引き」

一般的な金額で言えば、敷金は家賃の6か月分、礼金は1ヶ月、仲介手数料についても賃料の1ヵ月分が必要です。

物件取得際にかかる費用

  • 敷金(保証金)・・賃料6カ月分
  • 礼金
  • 仲介手数料
  • 賃料
  • 保険料

内装費


内装費は、内装にかかる費用となります。事務所などを借りるのであれば、そこまで必要ではないかもしれませんが、こだわりをもった施設を作るなら、ブランドイメージに合わせた内装は必須です。

内装費は、物件の広さや内容によっても様々ですが、面談室用に仕切りをつけるなど、要件を満たすための工事が必要な場合は料金も高額になります。おおむね100万円程度を限度にみておくといいでしょう。

内装に関わる項目

  • 仕切り
  • 床面
  • 看板
  • その他、施設に応じたデザイン

備品購入費

備品購入費は、机や椅子、パソコンなど備品の購入費となります。受け入れの人数によってもことなりますが、例えば利用者の人数×10万円程度の備品購入費は最低限でもかかります。また事務用のパソコンや机なども職員の人数にあわせて用意する必要があるため、200万程度の費用がかかる可能性があります。中古のものを使うなどすれば、安く抑えられるでしょう。

必要となる備品

  • PC
  • 椅子
  • 金庫
  • 文房具
  • その他作業に必要な器具等

消防設備費

消防設備費は、主に障害福祉施設の要件を満たすために、消防設備を準備するための費用となります。例えば消火器やスプリンクラー、防災カーテンなど、また非常口を確保するなど、指定された施設によって法令で定められた設備を用意する必要があります。

(非常災害対策)
第六条の二 障害児入所施設等は、消火設備その他非常災害の際に必要な設備を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を立て、非常災害の発生時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、それらを定期的に職員に周知しなければならない。

児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)

消防・災害対策のための項目

  • スプリンクラー
  • 消火器
  • 防災カーテン
  • 非常灯

人件費

障害者施設は、開業にあたり、サービス管理責任者や、生活支援員といった職員をあらかじめ配置する必要があり、たとえ利用がいなくても職員の給与は支払う必要があります。

人員基準
ア.管理者
・要件は、P23「(4)管理者」参照
・原則管理業務に従事するもの(管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可)
イ.サービス管理責任者
・要件は、P24「(5)サービス管理責任者」参照
・1人以上は専従かつ常勤とする。
○ 利用者の数が60人以下:1人以上
○ 利用者の数が60人超:1人+60を超えて40又はその端数を増すごとに1人増
ウ.サービス提供職員
(ⅰ) 必要な職種
・職業指導員
1人以上
・生活支援員
1人以上
※ 職業指導員、生活支援員のいずれか1人以上は常勤

東京都障害者サービス情報「指定申請の手引き」

その他雑費

その他、紙や文房具といった消耗品の購入や、水道光熱費、通信費や請求システムの利用料など、施設運営のためには細々とした雑費がかかります。

その他雑費の項目

  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 旅費交通費
  • システム利用料等

運転資金

運転資金は、事業所を運営していくにあたり、収入が入るまでの期間を営業するための資金です。障害福祉サービスの場合は、開所からすぐに満員になったとしても、報酬が入るのは2,3か月先となります。また、職員は開所前から研修を行うことなども考え、家賃+人件費、その他通信費、水道光熱費といった固定費の半年分くらいを運転資金として用意しておく必要があります。

資金はどれくらいあればいい?

開業する際に気になるのが、どれくらい資金があればいいのかということですよね。障害者事業の開業資金については、統計等はありません。そこで、今回は福祉事業のフランチャイズがだしている数字を参考に、幾つかの施設でのおおよその開業資金を調べてみました。

就労継続支援A型・B型

就労継続支援A型、B型の場合は、概ね700万円程度の自己資金を必要としているようです。おそらく自己資金に加えて、融資も受ける形での計算であり、概ね1000~1500万円程度が余裕がもてる開業資金かと思われます。

就労移行支援

就労移行支援は、大体600万円程度を自己資金とするとしているところが多かったです。こちらも融資前提での金額かと思いますが、就労継続系に比べると、作業や就労がなく、学習などがメインとなるため、設備投資なども若干抑えられるのかもしれませんね。

放課後等デイサービス・児童発達支援

こちらは400万円程度と就労系より若干安めの初期費用をしているところが多かったです。就労系と比べて、パソコンなどの導入台数が少なくて済む、床面積を抑えられるなど、コンパクトに始めやすいためかもしれませんね。

障害者グループホーム

グループホームですが1000万円程度の予算となっているところが多かったです。部屋数が多い物件の方が収益効率もよくなるため、広めの家を借りる設定になっているのかもしれませんね。また、防火設備などでも大きく幅がでそうです。

訪問系

訪問系ですが、700~800万円としているところが多かったです。訪問系については、借入無しの純粋な自己資金のみでの金額としているところが多かったので、借り入れをする場合は、400万円程度でもいけるかもしれませんね。

開業費を安く抑えるポイントとは?

開業費については、出来れば安く抑えたいですよね。そこでここでは開業費を安く抑えるためのポイントをお伝えします。

手続きを自分で行う

会社設立や指定申請など、福祉事業では多くの事務手続きがあり、それらを司法書士等に依頼すると、その分手数料がかかってしまいます。そのため、できる手続きは出来るだけ自分で行うことで費用を抑えられます。

兼務を活用する

サービス管理責任者と管理者など、一部の役職については兼務が可能になっています。兼務することで、人件費を安く抑えることが可能となります。兼務可能な役職は施設によって異なりますので、自治体等で確認するといいでしょう。

補助金を活用する

福祉事業を解説するにあたり、補助金を活用することで、費用を抑えることができます。ホームページ作成はIT導入補助金、その他新規事業所立ち上げの場合は、小規模事業者持続化補助金など、様々な補助金を活用することで、開業費を安く抑えることができるでしょう。

まとめ

本日は、障害者施設立ち上げにおける開業資金についてまとめました。開業資金については、施設や自治体の条例等でもかなり上下するところですが、出来るだけ資金面には余裕をもって進めたいものですね。本記事を参考に、ぜひ資金面の知識を深めてもらえたら幸いです。

監修者

トキタ行政書士事務所代表 鴇田 光晴。成蹊大学卒業。重度重複の障害者入所施設、児童発達支援や放課後等デイサービスでの勤務を経て行政書士として開業。加算や開業支援等、現場での経験を活かした実践的なサポートを提供しています。

トキタ行政書士事務所へ相談する→
コラム
福祉の補助金・助成金『福祉のお役立ち情報は『フクプラ』