障害者の方が共同生活をする住居を提供するサービスをグループホーム(共同生活援助)といいます。最近では、障害福祉への関心の高まりもあり、グループホームを開業したいという方も増えています。
そこでここでは、開業までの手順や利用可能な補助金、また実際の経営状況や儲かるのかどうかといった点をお伝えします。障害者グループホームを運営してみたいという方はぜひ参考にしてみてください。
障害者グループホーム(共同生活援助)とは?
障害者グループホームは、障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスの一種で、障害にある方に対して、日常生活の援助や介護等を行う施設で、現在は3種類のタイプがあります。
「共同生活援助」とは、障害者につき、主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談、入浴、排せつ若しくは食事の介護その他の日常生活上の援助を行い、又はこれに併せて、居宅における自立した日常生活への移行を希望する入居者につき、当該日常生活への移行及び移行後の定着に関する相談その他の主務省令で定める援助を行うことをいう。
介護サービス包括型
介護サービス包括型は、主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他日常生活上の援助を実施します。利用者の就労先又は日中活動サービス等との連絡調整や余暇活動等の社会生活上のサポートも行ってくれます。
外部サービス利用型
主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談その他日常生活上の援助を実施します。また、利用者の状態に応じて、入浴、排せつ又は食事の介護その他日常生活上の援助を実施しますが、外部の居宅介護事業所に委託しているのが特徴です。利用者の就労先又は日中活動サービス等との連絡調整や余暇活動等の社会生活上のサポートもあります。
日中サービス支援型
日中サービス支援型は、主として夜間において、共同生活を営むべき住居における相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他日常生活上の援助を実施 (昼夜を通じて1人以上の職員を配置)します。
利用者の就労先又は日中活動サービス等との連絡調整や余暇活動等の社会生活上の援助を実施し、短期入所(定員1~5人)を併設し、在宅で生活する障害者の緊急一時的な宿泊の場も提供します。
グループホーム開業の手順
グループホームは、障害福祉施設となります。そのため、開業までの手順は、通常の事業とことなり、行政に対して申請を行うなどの手続きを経る必要があります。
また、その関係で開業までの期間は、おおむね半年程度を見る必要があります。開業したいと思っても、翌月にすぐ開業したりといったことはできないため、あらかじめ逆算したうえで準備をすすめましょう。ここでは、グループホーム開業までの手順をお伝えします。
1.自治体に相談
グループホームの開業をしたい場合、まずは開業したい地域の自治体に相談にいきましょう。開業にはかならず自治体からの許可が必要となりますが、自治体によっては設立数を制限していたり、開業前の説明会を義務付けている自治体もあります。そのため、開業前にまず自治体に相談してみましょう。
2.法人を設立する
障害福祉事業であるグループホームを始めるためには、かならず法人を用意する必要があります。法人の種類については、合同会社や株式会社、社団法人等、法人格があればどのような法人でも問題ありません。また、法人であればよく個人で何か資格を取得している必要もありません。
3.物件を探す
自治体に相談し、また法人を設立したら、グループホームとなる物件を探しましょう。ただし、障害者グループホームとなる物件については、通常の建築基準法等の条件はもちろんのこと、障害者グループホームのために必要な条件を満たしている必要があります。
また条件は自治体によっても異なっているため、まずは自治体に条件を確認の上、自身の目的とするグループホームに適した物件を探すようにしましょう。
グループホーム用の物件で満たすべき要件(自治体によっても基準が異なるため、必ず自治体に確認)
・居室面積:収納設備等を除き、7.43平方メートル以上
・消火器の設置
・スプリンクラーの設置
・自動火災報知設備の設置
・誘導等の設置
4.職員の募集、書類の作成
物件が固まったら、職員の募集、および書類の作成に取り掛かります。どちらも自治体によって条例等で独自のルールが設けられている場合があるので、必ず自治体に要件を確認しましょう。ここでは、一般的な要件等について説明します。
開業に必要な職員
開業に必要な職員は施設の種類等によってもことなりますが、以下が一般的な配置基準です。管理者には資格は必要がありませんが、サービス管理責任者を一人以上配置する必要があります。職員が揃っていないと開業できないので、物件探しと並行しつつ早めに募集をかけることをおすすめします。
人員配置例
管理者 | ・常勤 1人配置 ・兼務可(ただし管理業務に支障がない場合) ・資格要件なし |
サービス管理責任者 | 一人以上配置。サービス管理責任者の資格を持つもの |
世話人 | 利用者の人数により配置数が異なる。資格要件なし。 |
生活支援員 | 兼務可、非常勤可。資格要件なし。外部サービス利用型は配置不要 |
夜間支援従事者 | 日中サービス支援型の場合、一人以上配置 |
必要書類
必要書類も自治体によって様々で、既定の様式を用意しているところもあります。自治体の障害福祉課等で確認しましょう。
必要書類の例
・申請書(所定の様式)
・運営規定
・開設するグループホームの平面図等
・職員の勤務体制
・財産目録または決算書
・事業計画と収支予算書(グループホーム事業に関する部分のみで可)
・就業規則、損害保険証書の写し
・事業者の定款
・協力医療機関との契約内容がわかる書類
・管理者、サービス管理責任者の経歴
・サービス管理責任者の証明書
5.申請書類の提出
必要な書類をそろえたら、指定申請書など必要書類の提出を行いましょう。提出内容に基づき、審査が行われます。場合によっては、直接現地で確認が行われる場合もあります。
6.指定通知
申請内容が問題なければ、指定通知が行われ、グループホームの開業が可能となります。指定通知の時期については、毎月の決まった日にちなど、自治体によって決まっている場合もあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
グループホーム開業のために必要な費用は?
グループホームの開業費用は、規模によっても異なりますが、おおむね以下のような料金が必要です。
法人設立費用 20万円
人件費 60万円
物件取得費用 100万円
内装費 50万円
備品等 50万円
運転資金(半年分)400万円
雑費 30万円
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合計 710万円
各項目は、条件によって大きくことなりますので、金額は目安として考えてもらえたらと思いますが、賃貸で始める場合は、最低でも500万円以上の資金は確保しておきたいところです。
グループホームの場合は、開業後にすぐに満床になったとしても、売り上げが入るのは数か月先になります。そのため、十分な資金を用意したうえで、開業準備をすすめることをおすすめします。
グループホームの利益率とは?正直な話儲かる?
グループホームは利用者さんのためにあるものです。しかし開業する側としては、運営を続けていくうえでも、利益率がどれくらいだせるのかが気になっている方も多いのではないでしょうか。ここでは、様々な統計を元に、グループホームの利益率や収益モデルを考えたいと思います。
障害福祉サービス全体の市場は拡大中
まず、グループホームが儲かるかを考えるうえで考えたいのが、障害福祉サービスの現状です。2023年度の厚生労働省調査では、障害福祉サービス全体で、市場は拡大しています。
図のように、障害福祉サービスにおいて重要な予算額は平成26年度から令和5年度までで2倍に伸びており、事業所も増加傾向にあります。
グループホームの利益率は5%越え
グループホームにおける利益率(収支差率)は、5.8%となっており、健全に運営をすることができれば、安定して利益を上げられる状況にあるといえます。
グループホームの収益モデルは?収入、支出の実際のところは
では、グループホームで収益をあげていくためには、どういった収益モデルとなるのでしょうか。こちらは決算単位とはなりますが、グループホームにおける収入、支出の実際の金額が厚生労働省より発表されています。
こうしてみると、平均的なグループホームの経営においては、人件費を6割程度におさえていることがわかります。また職員の人員等も公表されているため、赤字が続いているという場合は、まずこの中の数字にできるだけ近づけることを意識してみるといいかもしれません。
グループホームに使える補助金
グループホーム立ち上げにあたり、資金面が心配という方も多いのではないでしょうか。そんな時に活用したいのが補助金です。ここでは、グループホーム開業にあたり使える補助金を紹介します。
開設準備経費等補助金
開設準備経費等補助金は、グループホームを新設、または増設等を行う場合に、賃料等の経費を支援してくれる補助金となります。家賃借り上げ費56万円、また開設準備費で23万円を上限としてそれぞれ補助をうけることができます。補助金については、市町村単位で募集を行っているものとなっているので、もし希望する場合は、まず管轄のなどに相談してみましょう。
福祉・介護職員等処遇改善加算
職員の人件費等に使えるのが、福祉・介護職員等処遇改善加算です。厳密には補助金ではなく、福祉事業の報酬として申請する形になりますが、職員の給与に使うことができるため、積極的に使っていきたい補助金です。特にサービス管理責任者などは求人を応募してもなかなか採用することが難しい場合があるので、他の施設を差をつけるためにも、取得しておきたい支援となります。
ICT補助金
ICT補助金は、自治体等で応募されている補助金で、タブレット端末や管理ソフトといった、DX化の助けとなる設備投資を補助してくれる補助金です。地域単位の補助金となっており、すべての自治体で応募があるわけではないですが、多くの自治体で福祉事業のICT化支援を行っています。もし利用を規模される場合は、まず募集があるかどうかを役所のホームページ等で確認してみましょう。
グループホーム経営で失敗しないためのポイント3選
グループホーム経営は、障害福祉事業という特性もあり、事業モデルをよく理解したうえで行うことが大切です。ここでは、グループホーム経営で失敗しないためのポイントを3つお伝えします。
兼務を活用する
グループホームを運営する場合は、兼務を活用しましょう。兼務とは、管理者が世話人も兼任するなど、役割を複数担当することです。グループホーム経営において、人件費はかなりの割合をしめます。特に運営が安定しない初期のうちは、兼務を活用することをおすすめします。
利用者さんを事前に集めておく
グループホームなどの障害福祉事業の場合は、売り上げが入ってくるのは2,3か月先となります。そのため、例えば開業して三か月後に入居者さんが入ったとしても、売り上げが入金されるのは開業から半年後といった事態になる可能性もあります。そういった状況を避けるためにも、開業前から利用者さんを募集しておき、開業する時点である程度利用者さんを確保できるようにしておくといいでしょう。
加算を獲得する
障害福祉サービスでは、利用者さんからもえらる報酬は、国の規定で決まっています。そのため、満床になってしまえば基本報酬はそこからあがりません。しかし、加算を利用することで、より多くの報酬を得ることができます。加算は、例えば資格をもった専門職の方を配置するなど、よりよいサービスを提供することで獲得できます。運営をしていく際は、基本報酬に加えて加算を効率よく獲得することを考えていきましょう。
まとめ
本日は、グループホームの開業方法やポイント、収益モデルなどを解説しました。グループホームの開業を考えているという方は、ぜひ参考にしてみてください。